心構え編 (1) :竜巻ハンス
数年前のある昼下がり。バルセロナの大通 り(Diagonalだったかな)にあるカフェで、クリスと「ネイティブスピーカーの英語感覚」の下準備をしていた。するとそこに、
「やぁ、クリス。久しぶり」
雲を突くような大男が登場。ハンスだ。まぁ名前はわからんが多分ハンスだ。ハンスみたいな顔をしていた。口元と髪の色が実にハンスだ。
「やぁ、本当に久しぶりだ... ...」
クリスに皆まで言わせずハンス君、
スピード命。深夜の首都高ローリング族でもあるまいし。頭痛がしてきたので
「へぇ。英会話の先生やってるの? んで。フラットどっかで見つけたの?Sagrada Familiaあたりは僕も住んで... ...」
僕に皆まで言わせずハンス君、
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耐えられぬ。トイレに行くふりをして、ウエートレスのお姉さんと基礎スペイン語の練習しに行く。
「こーも・えすた・うすて?みー?はぽねーす」
飛行機の中で1時間しか勉強してないスペイン語だが、なんとか通じる。ヒマな店員集めてわいわいやりながらクリスを見ると... ... まだつかまっている。
「どんで・ぱるけぐえーる?あんとにお・がうでぃ。きえろ・むーちょ・ごー」
「ごー」は英語だ。
ようやく竜巻ハンスが帰って行ったので、店員さんたちに「ぐらーしあす」とか言って席にもどる。
「あれで英会話の先生かー」 クリスが遠い目をする。
「頭痛いよな。ドイツ人?」
「いや、オランダ人。なんだかあの人、勘違いしてるんだよ」
「うん。早くしゃべれば上手く聞こえるって思ってんだよな。日本でも似たような人はたくさんいると思うよ」
「ヒロトも知ってるよね、僕の友人のフランス人。彼、リラックスしてゆっくりゆっくり話すだろ。だけど他の友達は、彼のことネイティブだと思ってるよ。ゆっくりでもリズムがフローしてるから」
「うん。知的な英語を話す人だね、彼。竜巻ハンスとえらいちがいだ」
「ハンスって誰?」
このお話の教訓
早口でしゃべるのが「かっこいい」、「ネイティブみたいだ」と思っているなら、おおまちがいです。すぐにやめてください。リラックスしてリズムをフローさせること。
映画その他で、ネイティブの発音はやたらと「早く」聞こえるかもしれません。でも多くの場合、それは錯覚です。彼等は単に「意味の薄い語を弱く素早く・その他をゆっくり」読んでいるにすぎません。そこから緩急のフローが生まれているのです。
上の文はどれも、ほとんど同じ時間で読まれます。単語数が増えても「ゆっくり」読むべき単語の数は変わらないからです。そして弱く素早く読まれる意味の薄い単語は、
といった具合に、母音が弱く(口を動かさない音)なったり、母音がなくなったりします。こうしたシステムがネイティブの滑らかなフローを支えているのです。
フローさえ身につければ、リラックスしながらもネイティブのスピードがでてきます。そしてみなさんはそれを「早口」だとは決して思わないでしょう。