第6回 Negotiation 4.

Politeness -丁寧な印象を与えるテクニック- (4)

■先週までのまとめ

 1.      ビジネス英語は「ネイティブの感覚による英文法」。
  2.      まずは「丁寧な印象を与えるテクニック」
  3.      丁寧さの起源は「本来言いたいことから離れる」 こと
 4.      本質をつかめば「自由」に表現できる

こんにちは。今週も「丁寧表現」です。来週以降もしばらくこのテクニックにこだわっていくことになりますが、それには理由があるのです。


欧米型の negotiationでは assertive(自分の主張をしっかり言える)であることが常に要求されます。オックスフォード大学出身の国際ビジネスコンサルタント John Mole は "Commitment and tenacity, even to the point of obstinacy, are prized in the West. To change your mind, to abandon a position without a struggle, are signs of weakness. Sticking to your guns in an argument, not letting go, even in trivial matters, indicates strength of character. To a Japanese, it is the opposite." と言っています。要するに、欧米では自分の立場を易々と手放すような人間は weak だと判断される、ということです。このことは全体の調和を重んじるアジア型文化と個人を重んじる欧米型文化の違いを反映しているのでしょう。

もし自分の立場をその場の成り行きで易々と変えてよいなら、「丁寧表現」はまったく無用のテクニックです。いつでも「はいはい」とうなずいていればいいのですから。しかし英語を使って国際舞台で活躍されるみなさんには、当然のことながら assertive であることが要求されるのです。そして assertive であるということは、相手との軋轢・利害の対立が頻繁に生じるということなのです。 assertive でありながら、人間関係を壊さず最大の利益を得る、このテクニックが「丁寧表現」です。assertive であることと丁寧表現を使いこなす能力は優秀な negotiator の必要不可欠な武器なのです。
 
 さて今週来週と2週にわたるテーマは disagreeing (反対する)。


■ SCENE 2.  DISAGREEING (反対する)

他人の提案に対して反対せざるをえない局面はビジネスでは日常茶飯事です。軋轢をうみかねない危険な瞬間。ここを回避するテクニックを学びましょう。

ヲSITUATION
販売実績が急速に落ちています。会議が招集され問題解決が話し合われました。Sales Manager が現状を報告した後提案を行います。

まずはどーしよーもない例から。

 (i) 相手にケンカを売ってください

さて、いつものようにまずは相手を激怒させてみましょう(個人的にはこの例が一番楽しい)。もちろん自分ならどう言うかをいつもイメージしてくださいね。

A. It seems to me there are a number of ways we could deal with this problem. I'd like to start by proposing an intensive sales campaign.
(この問題を解決する方法はいろいろあるように思えます。集中的な販売キャンペーンを行ったらいいのではないでしょうか。このあたりから話を始めたいのですが)
B. God - not again! How many times have we tried that? Haven't you got any fresh ideas in that head of yours? I mean, you are supposed to be Sales Manager, aren't you?
(おいおい、またかよ。それ、何度やったと思ってんだよ。あんたのその頭にゃあたらしいアイデアってものがねーのかよ。あんたセールスマネージャーってことになってんだろ?)
A. Oh, and I suppose you have a much more brilliant proposal to make, huh?
(じゃ君にはさぞすばらしいアイデアがあるっていうんだな、あっ?)

<解説>
 ■語句■
 could: can の「過去」 ではありません。過去形を使うことによって can のもつ「〜できる」という強い意味合いから「離れ」た控え目な言い回しになっているのです。
 would like to: ぶっちゃけた話 want と同じ意味ですが、want は「欲している」という強い意味をもっているのでI want というと「僕したいしたい」という childish な響きをもってしまいます。ですからそれを避けるために would like to。
 have got: have と同じと考えていいですよ。
 be supposed to: suppose は「きっと〜だと思う」。be supposed to は「〜ことになっている」と規則・決まり事などによく使われる表現です。え?「どうしてこんな意味になる?」ですか?それはちょっとスペースがないので拙著「ネイティブスピーカーの単語力:基本動詞(研究社)」をごらんください。立ち読みでいいですよ。
 
さて B の発言ですが、Sales Manager の穏当な提案に対して God...! とあからさまな不快感を表す表現で受けています。これだけでビジネスでは十分失格(?) ですが、より大きな問題は far too emotional であるという点です。フラストレーション、怒り、さらには皮肉 (How many times..., you are supposed to...のもつ皮肉なカンジが伝わってきましたか?)を隠そうともしていないという点です。もちろん negotiation において emotionalであるということは a sign of weakness。negotiationではこのような弱点は相手に利用されて主導権を握られてしまうのが常です。相手がこのレベルなら negotiation は楽勝です。この場合、会議に出席しているすべての人の前でにっこり笑いながら相手の仕事にたいする態度・人間性を貶め相手の発言すべてを無効化させることも容易なのです。まぁ、この Sales Managerの場合は、I suppose..., huhに見られるように同じような皮肉で返してしまっていますが....。これでは話し合い成功は到底おぼつきません。どちらもかわいいレベルですね。

うーん。余計なおしゃべりが過ぎたようです。もう紙数がつきてしまいました。来週はイッキにいきます。

来週をお楽しみに。