第7回 Negotiation 5.

Politeness -丁寧な印象を与えるテクニック- (5)

■先週までのまとめ

 1.      ビジネス英語には「ネイティブの感覚による英文法」。
  2.      まずは「丁寧な印象を与えるテクニック」
  3.      丁寧さの起源は「本来言いたいことから離れる」 こと
  4.      ビジネスには assertiveness と丁寧表現のテクニックが共に必要

 さて今週はムダ話をせず、どんどん進んでいきましょう。先週の例をもう一度使います。相手の意見や提案を軋轢を起こすことなく却下するテクニックです。

■ SCENE 2.  DISAGREEING(反対する)A

ヲSITUATION
販売実績が急速に落ちています。会議が招集され問題解決が話し合われました。Sales Manager が現状を報告した後提案を行います。

 

 (ii) 相手の意見を普通に却下してください

相手はあなたと同じレベルの人。「丁寧に」などと思わなくて結構です。相手の意見を却下してください。B の話し手になったつもりで考えてみてくださいね。

A. It seems to me there are a number of ways we could deal with this problem. I'd like to start by proposing an intensive sales campaign.
(この問題を解決する方法はいろいろあるのではないでしょうか。まずは集中的なキャンペーンをはる、このあたりから話を始めたいのですが)
B. Yes, but we've tried it before with no success. I think something more innovative and daring is called for.
(ええ、しかしそれは以前試してみましたがまったく成功を収めていません。何か新しく思い切ったものが必要であると思いますが)
A. I take your point. Well, how about brainstorming more options and then examining them one by one?
(ええ、それはうなずけます。そうですね、ブレインストーミングをやってみていくつかの案を一つ一つ検討してみてはどうでしょうか)
B. Good idea.(いいですね)

<解説>
 B は丁寧さをあまり意識することなく普通に受け答えしていますが、友好的にそして実のある方向に話が進んでいます。その大きな理由は「言下に相手のいうことを否定しているわけではない」というところにあります。あくまでも穏やかに、肯定的 (positive) に話を進めているのがポイントです。
 学ぶべきは Yes, but... (ええ、でも)の使い方でしょう。yes で相手の発言を一応認め、but で自分の言い分を述べる。なかなか使いデのある表現なんですよ。また、自分の考えをそのまま相手にぶつけないように I think... を使っていることも特筆すべきでしょう。I think... の他にもPerhaps..., Maybe..., I'm afraid... などを文につけるだけで、簡単に発言をトーンダウンできる、これも学ぶべきテクニックです。

I'm afraid that idea won't work. (そのアイデアはよくないと思う)

こうした Bの態度が A の冷静な反応 --- I take your point. (take は「受け入れる」ということ)---を引き出しているのです。

 

 (iii) 丁寧に相手の発言を却下してください

さてそれでは「丁寧表現」に挑戦しましょう。丁寧に言うコツは、遠回し表現な表現や助動詞・過去形を巧く使いながら「本来言いたいことから離れ」るのでしたね。B の話し手になったつもりで考えてください。大切なのは想像すること、それがみなさんの英語を鍛えるのです。

A. It seems to me there are a number of ways we could deal with this problem. I'd like to start by proposing an intensive sales campaign.
B. Well, we could do that, but we've tried it before (1)without much success. (2)Couldn't we think of something more innovative and daring?

<解説>

(1) without much success:
with no success (まったく成功しなかった)を、遠回しな表現でやわらかに言い換えています。

さあ、もうみなさんには遠回し表現のコツがわかってきたはずです。そうそのコツとは「逆」をとることです。  「悪い」  -> 「いいとはいえない」 「変な顔」-> 「美男子では必ずしもない」 などとわれわれが日本語でいつもやっていることを英語でも生かしてくれればそれでいいんですよ。たとえば

 That was the worst presentation I've ever heard.
     (最悪のプレゼンだな)
のかわりに

 That wasn't the best presentation I've ever heard.
     (ベストだとはいいがたい)

と逆の単語を使うだけで、かなりトゲのない言い回しが可能になります。本文もまさにこのテクニックを使っていますね。

 with no success  ->  without much success

またみなさんの中には with limited success なんていう言い回しを思いつかれた方もあったにちがいありません。limited (=not very great) ですから、まったく同じメカニズムで遠回しな表現になっているというわけです。

(2)Couldn't we think of something...?:

何か新しく思い切ったものを考えられないでしょうか」ですが、could のお陰でcan を使った場合の「考えられないのですか」という強い意味合いも陰をひそめ、グッと控えめなカンジがただよってくるでしょう?もちろん

 We have to/ should/ must think of something...
        (考えるべきである)

などとするよりもはるかに丁寧な物言いです。断言ではなく相手に問いかける疑問文の形になっているところが「丁寧さ」の大きなポイントとなっているのです。
 ちなみにここで主語が we になっている理由は大丈夫ですね? Couldn't you think of ... なんて直接名指しで言われたら、ドキッとしてしまいますよね。それを避けるために、「特にあなたに言っているのではなくみんなの問題として考えていますよ」という we を使っているというわけです。相手の心にザラッと響く箇所を周到に消していく心配り、これが丁寧な表現のコツなのです。
 かなり英語ができる方なら、

 Wouldn't it better to think of...? (考えた方がよいのではないでしょうか)

も思いついたでしょう。かなりいいですよ。
 

いかがでしたでしょうか。「本来言いたいことから離れる」コツがみなさんそろそろわかってきたのではないでしょうか。来週もお楽しみに。