第8回 Negotiation 6.

Politeness -丁寧な印象を与えるテクニック- (6)

        
■先週までのまとめ

 1.      ビジネス英語には「ネイティブの感覚による英文法」。
  2.      まずは「丁寧な印象を与えるテクニック」
  3.      丁寧さの起源は「本来言いたいことから離れる」 こと
  4.      ビジネスには assertiveness と丁寧表現のテクニックが共に必要

みなさんこんにちは。interruption, disagreeing の解説を通してかなり丁寧表現の本質がわかってきたのではないでしょうか。「本来言いたいことから離れる」それがもっとも重要な「キモチ」です。さらっと読み流さず何度も繰り返しそれぞれの dialogue を眺めてくださいね。それらのテクニックは遠からずすべてみなさんのものになるでしょう。


今回は bargaining について解説します。今回は丁寧表現というよりも、むしろ英語でビジネストークをするときの心構えに焦点を当てて解説しましょう。

 

■Bargaining

英語力だけでは不十分です。

国際的なビジネスの場で活躍されるみなさんにとって英語力は単に必要条件の1つにすぎません。文化のちがいを理解すること。これも英語力同様、いえそれ以上にビジネスには必要不可欠なのです。

第6回では「文化の型」についてのお話しをしましたね。覚えていますか?そう、個人を重視する欧米型文化 (individualist culture)と集団としての調和を重んじるアジア型文化 (collectivist culture) について、です。この文化の型のちがいによって欧米人とわれわれ日本人とでは必然的な差が生じています。国際的なビジネスの場で不可欠なassertiveness(自分の主張をはっきりと述べることができること)は、欧米人にとって呼吸をするように自然で当たり前のことである一方、「和をもって尊しとなす」日本人にとっては克服すべき課題となる、というわけです。このような文化の型によるちがいを常に意識すること、彼等欧米人とわれわれ日本人の本質的なちがいを理解することは、ビジネスの場におけるスムーズなコミュニケーションにとって非常に重要なことなのです。

さて、今回は欧米型文化とアジア型文化を分けるもう1つの「軸」についてお話ししましょう。low-context culture - high context culture という切り口です。

われわれ日本人は欧米人と比較して「ことばをつかいたがらない」傾向があります。ことばよりもむしろその場のコンテキスト(雰囲気・状況などの文脈)を重視する傾向があるのです。「以心伝心」「腹芸」などわれわれが好んで使うことばはその事情を雄弁に物語っています。「男は黙ってサッポロビール」なんて CM もありましたよね(これはちょっとちがうか)。細かなことまでブチブチいわずニッコリ笑ってすべてを悟る、そこに日本人の美意識があるわけですが、それを欧米人とのビジネスの場にもちだすと事態は厄介なことになります。「いま僕はニッコリ笑って、あまつさえ'yes'とか言ったりしているけど、それはすべてこの場の雰囲気を壊さないためなんだよ。これまでの話から僕が本当は賛成していないってことは君にもよーくわかるよね。絶対わかるはずだよなー。だから僕の'yes' は 'no' ってこと」などという複雑な理解を相手に期待することはまったくできません。

われわれが high-context culture に生きているのに対して、欧米人は low-context culture に生きています。状況に依存せずにすべてを言語化するのです。日本人なら「こんなことまで」と思うような細かなことまでブチブチ言うのです。まさに "dot the i's and cross the t's" するのです。結婚前 ---日本人なら「あなたがすべて」と幸せの絶頂にいるとき---に、離婚で問題が生じないように法的拘束力をもった書類を用意する人々さえいる、これが欧米人なのです。

 ビジネスの場では(日本人にとっては不必要と思われるような)細かなこと
 まで言語化し、明確にしておく。

このことをわれわれは心にいつも留めておく必要があります。当たり前に思えることかもしれません。ですが「その場の雰囲気を壊さないため」「気持ちよく仕事するため」われわれはつい怠ってしまいがちなのです。

さて、本題に入りましょう。ビジネスでは「ここまでは OK。この条件をのんでくれたら契約しましょう」など条件設定をする場面が頻繁にあります。「以心伝心」ではすまない局面です。今回はこの bargaining process にまつわる英語を眺めてみましょう。

 

■ SCENE 3.  Bargaining(条件設定をする)

 (i) まずはかなりキツい言い方から

A. So we are offering you a 10% discount across the board. (全商品 10% の割引ということで...)
B. That is totally unacceptable. We will withdraw all our custom if you don't come up with a much better offer.(まったく話になりませんね。もっといい条件でないとおつきあいはできませんな)

<解説>
条件を設定するときには、if ... を使っておけばOKです。もちろん unless... (もし....でないなら)としてもいいですよ。この場合上の太字部分は

 unless you come up with a better offer

となります。ちなみに withdraw all our custom は 'we won't buy from you any more' ということです。かなり totally unacceptable とあいまって非常にthreatening な物言いとなっています。

 

 (ii) やわらかく丁寧な言い方をしましょう。

A. We could offer you a 10% discount if you guaranteed payment on delivery.
(納入時のお支払いなら 10% 値引きできますが)
B. You are asking a lot. I'm afraid we couldn't accept that unless you increased the discount to 20%.
(それはむずかしいですねぇ。値引きは20%に増やしていただかないと)

<解説>
 上のdialogueでは過去形や I'm afraid..を使って丁寧にはなっていますが、条件設定にはやはり if, unless が使われてますね。条件設定には他にもさまざまな表現を使うことが出来ます。慣れておきましょう。

I'll stay provided that you raise my salary.
(給料あげてくれるなら辞めません)
Your job will be safe, as long as you agree to work abroad.
(外地に行くことを飲むなら仕事は保証しよう)
We have a deal, on condition that you cover 75% of the costs.
(75% もってくれるなら契約成立だ)

 

さて、いかがでしたでしょうか。今回は丁寧表現のメカニズムに関してはあまりスペースをさきませんでしたが、もう大丈夫ですね?


次回はテスト。今までの復習をしていただきましょう。お楽しみに。