第9回 Negotiation 6.

Politeness -丁寧な印象を与えるテクニック- (7)  -テスト-

        
■先週までのまとめ

 1.      ビジネス英語には「ネイティブの感覚による英文法」。
  2.      まずは「丁寧な印象を与えるテクニック」
  3.      丁寧さの起源は「本来言いたいことから離れる」 こと
  4.      ビジネスには assertiveness と丁寧表現のテクニックが共に必要
 5.    欧米文化は low-context culture。「なんとなくわかってくれるだろう」    という期待は一切もたず、細部までツメる。

みなさんこんにちは。今日はテストです。今まで解説してきた丁寧な印象を与えるテクニックがどの程度身についているかをご確認ください。

 

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【問題】
会議の席上で社長が5%のボーナスカットを提案しました。経営状態の悪化がその理由です。あなたは反対です。最近の downsizing の結果社員の士気(morale)はすでに著しく低下(low)しており、社長はそれに気がついていないようなのです。ボーナスカットよりもましなコスト削減 (cut cost) のやり方を話し合わねばなりません。そこであなたは社長の発言をさえぎって割り込みます...

さてみなさんならどのように反対を表明しますか?

                

【ヒント】
丁寧表現に気を配らなければ次のような発言になるでしょう。

That's a really bad idea. Don't you realise how low the morale of the staff is already, after the recent downsizing? We must find a better way to cut costs.

しかし相手は社長です。アタリの強いザラッとする言い方は避けねばなりません。この発言にはいくつかの問題があります。

(1) 社長の発言に割り込んで、突然 That's a really bad idea. と始めている点。このような発言の仕方は社長ならずとも反感を買うことまちがいなしです。
(2) Don't you realise....? の文は「わかっていないのですか?」ですね。つまり相手の無知に焦点が当たっています。これも避けておかねばなりません。
(3) 最後の文ではbetter がでてきています。しかしできればこれも避けておきたいところ。better ではこの場合社長の提案に「よくない」という判断を下していることになります。「だから better な方法を探さなくてはなりません」というニオイが漂うのです。

 さて、もう少し考えてみてください.............

 

【解答例】
注意深いネイティブなら次のような発言となるでしょう。

Excuse me, but I'm not so sure that that would be advisable. You are obviously aware of the low staff morale at the moment, after the recent downsizing. I would suggest that we try to find an alternative way to cut costs.

いかがでしたか。この解答例を読んで「なるほどな」と思えた方、すでにかなりの英語力ですよ。

<解説>
それでは簡単にいくつかのポイントを解説しましょう。

Excuse me, but...:
丁寧に相手の発言をさえぎることば、でしたね。
I'm not so sure that that would be advisable.:
bad というかわりに advisable だと確信できない、と言い換えています。典型的な遠回し。また would にも注意しておきます。この過去形も丁寧表現のポイントでしたね。

You are obviously aware...:
Don't you realise...? と相手の無知を攻撃するやり方は評価できません。かわりに社長の ego を刺激しましょう。そう、「社内の状況や従業員の感情に配慮されている社長なら当然ご存じのことと思いますが」という気持ちをにおわすのです。

I would suggest... alternative way to cut cost:
We must... と高圧的なことばを持ち出すかわりに、「...と思っているのですが」と「1つの意見として...」という控えめな言い方にしています。better のかわりにalternative (代案)を使っていることにも注意してください。better のもつ優劣のニュアンスを避けているのです。

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さていかがでしたでしょうか。「解答例」に近くなくてもガッカリしないでくださいね。これはネイティブレベルーしかも言葉遣いが巧みなーのものです。ノンネイティブのわれわれに最初からこのような言い回しができるはずはありません。ですがこれまでの解説から、すでにみなさんはこの発言の裏にあるネイティブの「キモチ」に気がつくようになったはず。それが大切なのです。ネイティブのキモチを理解しながら多くの例をながめることによって、みなさんの英語は長足の進歩を遂げるにちがいありません。

 

今年もがんばっていきましょう。よろしくお願いいたします。今年はこのコラム以外にもいろいろな企画でお目にかかることができると思います。 大西泰斗