まいど。アイルランドとドイツの試合はすごかった。別 にサッカーファンというわけではない。しいて言えば「根性ファン」だ。    

ちびっ子のアイルランドが、頭一つ背丈の違う、巨人相手に根性を出す。後 半のロスタイムで、根性シュートを決めて引き分けに持ち込む。うーむ。すば らしい。  

テレビを見たあと、     

「さーて、根性入れてメルマガ終わらせるか」  

と思ったら、寝てしまった。                  

というわけで、早朝から診断開始だ。うう。授業あるのに。


カルテ NO.3               横浜屋              

-もぁぁ症候群-


  (注:登場する会社・製品名は仮名です)

■■クランケとの出会い■■  

今日はパンでおなじみの横浜屋。実は私はクランケと出会っていません。ク リスが往診で見つけました。私はこの店、たこ焼き屋だと思ってました。  研究室に来たクリスが、

   「ほらヒロト、バターたっぷりのクロワッサンだよ」    

確かにおいしそう。山咲屋一筋40年の私も思わず気持ちが揺らいでしまう。 しっかしなー。太川陽介(*1)になれないしなー。


編集部注 (*1)  

前回のno.2では、たくさんの「字まちがってんだろ、こら」メールありがと うございました。「田川」でなく「太川」。大西先生は「読者の平均年齢は思 いの外高いんだなぁ」と感心していました。  またバターとマージャリンのカロリーに関しても、たくさんのメールありが とうございました。「バターでないから」と油断してはいけないのですね。  

るいるい。


 

■■クランケの容体■■

We wish all the time to be able to provide you fresh bread and to propose you a joy of eating life with bread.         

(すべて原文のまま)

■■診断■■  

まじめに書こうとはしている。何かを懸命に、誠実に願っているのはよくわ かる。何を願っているかは......秘密にしているようだが。    

まずは単純な間違いから指摘していきましょう。

★provide(動詞の取る型)  

provide という動詞は、give のようなパターン、I gave him a pen. と いった形は取れませんでしたね。provide you with fresh bread です。  

★be able to  

いりません。「...できるような能力をもちたい」では困ります。パン作り のプロなんですから。

★propose you...  

propose は「提案する」です。後ろには a plan, an idea など提案内容が くる動詞。次のように「人」が来る場合も、実は提案内容。    

I propose Bill for this position.  

(私は Bill が適任であると思います)  

それでは propose you... とは?「あなた」を提案するのは、ちょっとむずか しいですね。ちなみに give と同じように使って

*I proposed her a new system. (彼女に新しいシステムを提案した)

という形も取れませんよ。だからこの文は、そーとーわからんのです。

★joy of eating life...  

Who can eat life??? life はやはり鬼門ですね(no.1参照)。  


文法的な問題はさておき、この文章の一番大きな問題は、それが「もぁぁ症候 群」に罹っていることです。


今まで述べた文法上の問題がたとえ全部解決したとしても、この文章はよく なりません。ネイティブの書いた文とは決定的に何かがちがうのです。それが 「もぁぁ症候群」。    

こういった広告文の命は「キレ」。簡潔・キャッチー・スナッピー、それが 大切なのです。この文章は、    

We wish all the time....  

all the time という大きなフレーズが入っているおかげでズブズブのリズ ム。どうして always を使わないのでしょう。  

to be able to  

必要のない大きなフレーズのおかげで、ズブズブズブ。 全体として「もぁぁぁぁ」のイメージになっているんです。姉妹メルマガ「は らわた」でも説明しましたが、「上級者は最短距離を目指す」のです。みなさ んも、英語を書くときに気をつけておくべきポイントですよ。    

ちなみに意味の上でも all the time は、コケています。always と異なり all the time は「ある一定の期間」を想像させるからです。    

A: I told you to stay here, but you left the room, didn't you?  

(ここにいろって言ったのに、部屋を出たな)  

B: No! No! I've been here all the time.   

(そんなことないよ。ずっといたさ)   

ほら「期間」が念頭に置かれているでしょう?ちなみにこの文で always は使 えません。ちがいがわかりますね?

■■治療方針■■  

うーむ。これは大規模な「しりつ」が必要です。

■■術後の経過■■

Our aim is to always provide you with fresh bread which will add lots of pleasure to your eating experience.  

これで快癒しました。執刀のポイントは冒頭。クランケの「もぁぁ」が消え ていますね。...truly enhance your eating experience と高飛車に決めても いいでしょう。    

慎重を期す余りに陥ってしまいがちな「もぁぁ症候群」。みなさんも気をつ けてくださいね。

■■レセプト■■  

今回は動詞パターンのミスが目立ちました。動詞の取る形には、共通 したイ メージがあります。それを知ることがまちがいを犯さないための第一歩。まず はニューキドロン系の抗生剤で様子をみましょう。

   「ネイティヴの感覚がわかる英文法」 NOVA 出版局  

英文法の主要部をコンパクトに見渡せるようになっています。  文型とイメージの関連をさらに詳しく知りたい方は、英文法のバンコマイシ ン EBF をご利用ください。  

「ENGLISH BRAIN FORCE story A」 (DHC 教育事業部)  

まいどあり。

 


□□□編集後記 (no.3)

 うーむ。それにしてもアイルランド。かえすがえすもアイルランド。この試 合で、日本の子供たちが根性のすばらしさを知ってくれればなと思う。最近の テレビには「根性」がない。    

「生まれたときからウルトラマンです」「自然に竜巻を起こせるようになり ました」「結局大魔王の息子でした」「なんとかモンスターを集めて、適宜戦わせて楽しんでいます。自分は応援係です」....そんなのばっかりだ。これで は根性が育たない。    

「ケロッコでめたん」の再放送をお願いします。    

しっかし、結局「虹のお池」に辿り着くことができたのだろーか。うーむ。 気になる。