Car_File 1. 陸の王者トヨタカローラ


いわずとしれたトヨタの看板商品。私も5万キロほどお世話になった。

カローラ趣味の車話をカローラから始めるのは大変気がひけるが、正直この車は素敵だと思う。特に10年以上経ったボロボロのカローラは。道ですれちがうと得も言われぬ 余韻がある。この車には哲学があるからだ。

何もいらないという哲学。街角の求道者。

車は服と同じだ。車の向こうに所有者の趣味や生活、他人からどう思われたいのかが透けて見える。所有者が意図するしないにかかわらず、だ。ベンツのCクラス(セダン型のもっとも小さいシリーズ)を見ると「よかったなぁ。ちょっとお金が貯まったんだね」と思うし、ボルボのV70(ボルボの定番ワゴン)を見れば「安全第一なんだね」と思うし、セルシオ(トヨタの最高級車)を見ると「立派なおっさんになったんだね」。だがカローラには何もない。カローラの背後には虚無の空間が広がっているだけだ。そこがしびれる。

カローラには突出したところが何もない。物欲しげなところがまるでないのだ。

「やったぁ。今日は合コンだぁ。とっておきの蝶ネクタイしていこっと」こういうあぶら性の男は普通 モテない。かえって 興味なさそなユニクロ君の方が素敵に見えたりする。カローラのカッコよさの本質はそこにある。そしてカローラが描く虚空は濃密だ。ユニクロ君に声をかけたら MIT博士号だった、それと似ている。

私は仕事で頻繁に東名高速を使うが、故障で路側帯に停まっているカローラを見た記憶がない。台数を考えれば驚異的な信頼性の高さだ。一方型落ちした外車はよく見かけるところ。当たり前だ。外車は日本車以上に定期的なメインテナンスを前提にしているからだ。たとえメルセデスであっても、だ。それを怠れば最悪動かなくなる。そしてそれは機械である以上当然のことなのだが。

カローラは動く。

買ったら最後次の車検までボンネット開けません、というオヤジのカローラも動く。どうやったら「ふた」が開くのかしりません、のおかあさんのカローラも動く。いつでも動くしいつまでも動く。こいつを作った技術力の高さと暖かい視線が見える。

道具である以上のいかなる意味も与えない、そして道具を所有する以上のいかなる痛痒も感じさせない陸の王者。それがトヨタカローラである。

すてき。