Car_File 7. バッポン拒否 BMW X5


BMW 社初のSUV。5シリーズをクロスカントリー風にアレンジした。

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奥飛騨。人を見かけなくなって小1時間。道らしい道もなくなり排気音は堆い雪の層に吸い込まれていく。
「ジャッキで車体を上げてチェーン巻いとけ。ポイントまちがえるなよ。念のためウインチも確かめておけ」
息子が黙々とチェーンを取り付けている間、地図とコンパスで位 置を確かめる。
「あと2キロで小屋に着く。近くに温泉も出ているはずだ。風呂は久しぶりだな」
真っ黒に雪焼けした息子は白い歯を見せて頷く。


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x5人間不惑を過ぎると病気にかかるものだ。「ワタクシハコノママデイーノダローカ」病だ。真面 目と地味だけが取り柄の私にとってその淵は深く限りがない。(地味な大学生だったなぁ。そんでもって地味な先生になったなぁ。97%の確率で「地味な一生を送りました」になるな、こりゃ)。

「生活を変えねばならない。それもバッポン的に」

急いで車を買いに走った。悪しき旧弊を廃しバッポン的に生活を変えるには車しかない。まぁ冷静に考えるとそういう思考経路自体が「悪しき旧弊」なんだが。

「テーマは『山男』でゆく。ボーイスカウト浦和第8団だったから、山とは友達というか赤の他人ではない程度の付き合いはある。農家を脱走したニワトリ食べちまったり沢ガニ囓ったりまちがって墓石の上にテント立てたりしたこともあることだし。新田次郎好きだし、栄光の岸壁だし」

しかし中年男の「バッポン的」には悲しい限度が存在する。本格的オフローダーは全部パス。角ばっているので見ただけで肩が凝る。この時点で三菱パジェロ、トヨタランドクルーザー、日産サファリなどなど国産車はほとんど脱落する。乗り心地が堅いのもダメ、腰が痛くて山まで辿り着けないから 。後ろにタイヤがついているのもダメ、恥ずかしいから。エンジンがガサツなのもダメ。ダメダメダメの消去法で選んだのがこの車。
 
バッポンを夢見ながらも体がバッポンを拒否している男の車。それがBMW X5だ。
 
この車、多少背が高いだけで実は普通のセダン。乗り心地はいいしエンジンも気持ちよく回る。足回りも秀逸でこれほど背が高いのに振り回しても容易に破綻しない。まぁ体重が2tを越えるので車というよりはゾウガメに乗っているような気がするのはご愛敬だが、それは仕方がないことだし我慢ならないほどでもない。だが購入約1ヶ月後。とっても致命的なことに気が付いた。

この車、ちっとも山に行きたくならないのだ。

山よりもデニーズ駐車場の方がよほど似合っている。この車で唯一行った山は近所の「東山動物園」。標高差10m。だがまぁいい。どのみち深山に分け入るにはあと10年ほど待たねばならないのだ。

 


 
息子はまだ弱冠5歳だからだ。