Car_File 8. 気分は戦争 Mercedez G500


そもそもは軍用車。NATO軍用に開発された。1979年より一般 に向けて販売開始。

 

G男は女とまったくちがった生物だ。2種類育ててみればわかる。男には「闘争」の2文字が遺伝子奥深く組み込まれている。

大学病院小児科病棟補助ベッド。
朝寝ぼけ眼を擦っていると、隣のベッドから「ぐぅらぁんせぇぇぇぇいざぁー」のうなり声が聞こえてくる。「さじあぁぁりあすぅぅ」。Sagittarius のことらしい。

「ぶじぃ」。

隣の白血病の小僧が改心の笑みを浮かべている。さっきの「ぶじぃ」は私が潰された音らしい。ヤツに殺害されるのはこれで 32回目だ。
「むぅぅぅ」と胸を押さえて断末魔の悲鳴を上げていると、脇で「黒龍波ぁぁぁぁ」。息子だ。

「ぐしっ」。

これで48回目。 そろそろ腎臓病のガオレンジャーが到着する時間だ。

たいていの男はその後、仮面ライダーになれるわけもなく八百屋になったり乾物屋になったりするわけだが、闘争への意志が霧散したわけではない。折りあらば顔を出す。なんらかのキッカケで闘争への意志が発現するのだ。私の友人のK君はスイスアーミーナイフを買って喜んでいるし、T君は「月刊まる」を定期購読している。ミッドウェー開戦の詳細が知りたいからだそうだ。

さーて、やっと車の話。

自動車の中には軍用車を起源としてもつ車がいくつかある。メルセデスの Gクラス、湾岸戦争で有名になったハマー、ランドローバーの Defender(エライ名前だな)など。もちろん軍用車そのものではなくさまざまな快適部品が付属しているが、他の車とはまったくちがった質感をもつ。

G500。どー考えてもこういった車がこの日本で必要だとは思えない。見た目通 りの鉄板の塊。乗り心地ゴツゴツ。ガソリンぐびぐび。乗り降りはいちいちクソ重たいドアを「がーん」と閉めなければならない。私にはこの車で名古屋ー東京を往復することは到底考えられない。......だけどね。悪くないんだな、これが。この車を見ていると遠い昔に置いてきたワクワク感がふと蘇ってくるからだ。GIジョーの迷彩服が欲しかった頃のキモチを思い出すからだ。

息子を病院に担ぎ込んだのがこの車。救急車を待てなかったからだ。病院についたときにはクラクションが鳴らなくなっていた。

 

 


 
男の子を育てるのは戦争である。