さて、パパは車が好きである。愛車は5年選手のサニーだ。義理の妹のおさがりである。前の車が12年選手のカローラだったから、ずいぶんの出世となる。市場価値も大体25万円。近所の高いと評判の中古車屋で確認した。カローラは捨てるとき1万円かかったから、これまたずいぶんの出世だ。
車に文句はない。ガソリンは減らないし、雨は漏らないし、タイヤも4つついてる。イギリスで乗っていた10年選手のローバーと比べるとエライちがいだ。あれはタイヤが4つついているだけの代物だった。
完全無欠のサニーにも1つだけどうしても許せない欠点がある。それはクラクションだ。
名古屋は一般に東京より運転が荒いといわれている。確かにウインカーを出さないで急に曲がる車は幾分多いように思うし、時には「大外刈り*」と呼ばれる大技がきまることもある。私はまだ遭遇したことはないが「小内刈り」という技もあるらしい。というわけで、元来気が短い私は車の中で怒ることが多いのである。
「ぶっぶあかもん!死ぬ 気か」 クラクションに手を伸ばす。
「みっ、みぃぃぃぃ」 気を取り直してもう1度ならす。
「みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
いかん。この状況でこの音はいかん。1歳になる息子のアンパンマンハンドルの方がはるかに気合いが入った音がする。
もしかすると近所迷惑なクラクションを使わせないためのアイデアなのかもしれぬ 。日本国中の人間に情けない思いをさせるための CIA の陰謀なのかもしれぬ 。
今度落合信彦に訊いてみねばなるまい。
*大外刈り<おおそとがり>
右折の際に決める技。右折レーンに長い列が出来ているとき、隣の直進レーンから交差点上に出て、右折車をまくって先に行くという荒技である。