朝靄に霞むニュルンブルグのワインディングを切り裂いて、排気量を274cc 拡大した赤い跳ね馬の旗艦が駆け抜ける。すべてのテクノロジーが誰よりも早く駆け抜けることに傾けられた12気筒、最高出力 520馬力のこのモンスターマシーンにとって、274cc の排気量増大は単なるスペック上のエラボレーションではない。そのエモーショナルな存在感はすでに機械の領域を越え、排気音は言葉を失った我々を残し通 り過ぎていった。
女性には余り縁のある話題ではなかろうが、40前後の男は大抵自動車雑誌を読んで興奮した暗い過去を持っている。大体こういったよくわからん文章を読んで喜んでいたはずだ。まぁかなり気恥ずかしいお笑いぐさの文章だし、書いていても背筋を駆け抜けるものはあるんだが、若者というのはそうしたものだろう。
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私が普段乗る車は、定員2名。狭い。運転席の後ろはほぼ直接窓。空間は恐らく中型冷蔵庫以下。滅多に人を乗せたことがない。空気の絶対量 が少ないので、隣の吐いた息を私が吸い込んで私の吐いた息を隣に吸わせる、という些か気味が悪いことになるためだ。
そうした車の常として、トランスミッションはマニュアル。東京から名古屋まで走ると、何百回も「クラッチ切って・シフトして・クラッチまた繋ぐ」という一連の操作をすることになる。まぁ体調が良いときはそれが楽しいのだが、40男は毎日元気なわけじゃない。嵐も吹けば風も吹く。
そろそろ年相応のおっさん車買おうかな。そーだ。今流行りの「走る四畳半」みたいな車を買おう。
頭の中ではいつも「ニュルンブルグのワインディング」でバトルを繰り広げていた不良中年も、寄る年波には勝てず、車屋めぐりを始めたのであった。
<以下次回>