英語のはらわた no. 1

みなさんこんにちは。今日から週に1度、特別な時間を私たちと共に過ごし ましょう。日本語訳ではなく、ネイティブはどう「感じているか」。この体験 がみなさんの英語力の深い部分にもたらす変化は、3ヶ月後を楽しみにお待ちください。                 

さてそれでは、課題文を早速読んでみましょう。今週は前半部。NEWSWEEK/ TIME 程度のわかりやすい単純な文章です。ですが、いいですか。日本語に訳すだけではありません。そんなことは他でやってください。誰でもできます。

「はらわた」では、細大漏らさず課題文のすべて ---文の呼吸・呼応・語彙 のニュアンスなど---を味わい尽くします。頭に刻み込むように「味わい尽くす」のです。舐めるように読んだ文の数がみなさんの「書く力」、ひいては英語力を決定 するのですから。

とことん舐めるぜ。  

In sheer numbers, youth violence has begun to decline somewhat after a surge starting in the late 1980s. Despite the numbers, many experts say crimes by youths have been getting increasingly violent.

【以下次週】 They continue to debate what role drugs, media violence, poverty and unemployment play in fueling the problem. But most blame unprecedented access to guns, and too little parental or school supervision, for making youths who may be inclined to violence ever more deadly and reckless.

【大意】 若者の暴力行為は、1980年代末の爆発的増加と比べると幾分減少の傾向を見せ ている。しかし数の減少にも関わらず多くの専門家は、その犯罪傾向はますま す凶悪になって来ていると考えている。

 

表現を舐める 

訳すのは簡単です。ですが、読み方を変えましょう。「果たして自分にこの文が書けるだろうか」 という視点です。自分の中にその視点をもつだけで、ずいぶん読み方が深まり能力があがります。

係り受けの呼吸をつかめ:in sheer numbers(数の上では)

日本語と同様、英語の文章も常にさまざまな「予測」の上に成り立っていま す。読み手は「上手に予測をすること」、書き手は「上手に予測をさせるこ と」、それが文章のイロハです。

冒頭の in sheer numbers に、「予測」が働いた方、あなたはなかなかの実力者です。この部分が書き手が置いた布石です。

in sheer numbers、この部分を読んだだけで、ネイティブなら話の筋道がわ かります。「あ、この後で論旨がひっくり返るな」---それが「予測」です。

sheer はほとんどの辞書(含英英辞書)で「全く(complete)」と最初に説明 されますが、この「全く」を取り違えてはなりません。「全く」といえば 「(いろいろなものを含み込んで)完全な」と理解されがちですが、sheer の 「全く」はそれとは逆です。「以外の何物でもない・それ以外に形容のしよう がない(nothing but)」、つまりは「純粋、まじりっけなし(pure)」という感 触なのです。sheer luxury, sheer madnessは、ほら「貧乏くさいものなど一 切混ざっていない贅沢そのもの」「正気の部分がまったく残っていない、まさ に狂気」ってことですよね。こう考えるとsheer drop (切り立った崖)もわか るでしょう?まさに 90度。drop としか形容できない、ってことですよ。  

sheer がわかっていると、in sheer numbers、意味がわかりますね。「数だ けを取り上げれば(他の要素を考えなければ: If we consider nothing but numbers /statistics we get the impression that...)」ということです。 ほら、この文の後に「だが... 」と論旨がひっくり返ることが予測できます ね。そこで後ろを読むとDespite the numbers (〜にもかかわらず)。案の定、論旨がひっくり返ります。

ちょっとした予測を縦横無尽に張り巡らすことが、リーディングでは大切で す。また書くときには相手が予測できるようにする(話の展開を予想させる 「種」を播いておく)ことを忘れないようにしましょう。

ちなみにここの in は、in English(英語で)などと同様、普通の in で す。「〜の中」というわけですが、「範囲」を限っているにすぎません。「純 粋に数の話に限ってみると」ということです。  また numbers が複数になっているのも「10月:5000件・11月:4500件」な どの統計上の複数の数字 (number)が念頭にあるからです。

decline(減少する)

ここを試しに decrease と代えてみましょうか。うーん。かすかにピッタリこない感触が残ります。decrease は numerical amount、すなわち「数量」の 減少がもっともピッタリくる単語。一方decline は「傾く」が基本にあります から、抽象的な意味合いにもフレキシブルに対応できます。主語は「暴力行 為」という社会問題(social problem)ですから、やはりここは decline の出 番でしょう。なかなかしっかりと書けています。

surge(急激な増加)

 surge は「増える」ということです。ですが increase のような平板な単語 ではありません。自然吸気エンジンを積んだ普通のスカイラインのアクセルを 踏んでください。「ぐーっ」とスピードが乗ってきます。それが increase で す。今度はターボエンジンを積んだスカイライン GTRに乗りましょうか。床ま でアクセルを踏みます . . . 「ぐぐぁぁぁぁぁっ」背中がシートに押しつけ れられるような暴力的な加速 . . . それが surge の増加です。  

in the late 1980s(1980年代末)

 late の使い方をしっかりと把握しましょう。「後半」「末」などさまざま に訳されますが、具体的には

1980, 81, 82, 83, (in the early 1980s)

1984, 85, 86 (in the mid 1980s)

1987, 88, 89 (in the late 1980s)

Despite(〜にもかかわらず)

 これは有名な in spite of に変えてもニュアンスは同じ。区別はありませ ん。

その他の表現

youth violence:若者の暴力

somewhat: いく分

crime: 犯罪

youth: 若者

get violent: 暴力的になる  

In sheer numbers, youth violence has begun to decline somewhat after a surge starting in the late 1980s. Despite the numbers, many experts say crimes by youths have been getting increasingly violent.

 

文の形を舐める  

文全体の形とニュアンスも味わい尽くします。

現在完了の味わい:「今」に焦点   has begun to decline...(減り始めた)  

現在完了形のもつフィールは「今」です。ためしに began to decline と、 過去形をおいてみましょう。その途端「減り始めた」という出来事は、書き手 (ひいては読み手)から「離れた」感触になっていきます。今と無関係な単な る「過去の出来事」という感触になります。現在完了によって書き手は、この 出来事が「今とつながっている」というフィールを醸し出そうとしています。 私もここは現在完了が相当だと思います。この記事は言うまでもなく「現在の 状況」に焦点が当たっているからです。過去はちょっと「遠くて」、ざらっと きますね。  

現在完了進行形 (have been -ing) の味わい:行為に焦点   have been getting...     

have と進行形(be getting) がコンビで出てきています。いいですね。非常 にいい感触で文が続いています。というのは、ここで出したいのは    

どんどんどんどんどんどんどんどん暴力的になっている  

という坂道を転がっていく感触。get violent が間断なく今に続いている、と いう感触です。こうした「行為(動作)が間断なくずーーーーっと続いて現在 に至る」と、行為にスポットライトを当てる感触は have been -ing ならで は。

ためしに have been getting... を単なる現在完了、have got increasingly violent に書き換えてみましょう。 Crimes by youths have got increasingly violent. ほら、単に「今」に焦点が当たっているだけ。「今はますます暴力的になって いる」です。どんどん暴力的になっているという動感・勢い・不可避性が失せ てしまいます。                  

 

さあまとめです。同じ文をもう一度読んでみましょう。飛ばし読みではわからなかった、文章のリズム・フィールがつかめているはずです。感じることが できれば、遠からず同じレベルの文が書けるようになるのですよ。ほら、もう「数だけ見れば...でもね」こんな書き出しがお手のものになっているでしょ う?    

積み上げるんだよ。

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いかがでしたでしょうか。これが書く気持ちで読む、ということです。この レベルの読みが瞬時に働いて初めてネイティブクラスの読みだということで す。道は遙かです。でも大丈夫。みなさんには、僕とクリスがついてるから ね。    

また来週。    

さ、アイスでも舐めよっと。最近「がりがり君」が好きなんだ。