英語のはらわた no. 11

今週は Sir Isaac Newton 最終回。すでに本文を暗記するほど「舐めて」し まった読者も多いことでしょう。すばらしいことです。この文章はそうした価 値のある文章だからです。    

今回はいくつかの「文の形」に関するテクニックを舐めていきましょう。

I do not know what I may appear to the world; but to myself I seem to have been only like a boy playing on the seashore, and diverting myself in now and then finding a smoother pebble or a prettier shell than ordinary, whilst the great ocean of truth lay all undiscovered before me.

【大意】 世人が私に下す評価については知る由もないが、私は海岸で戯れている1人の 少年に過ぎぬ。ほんの時折、滑らかな小石やかわいらしい貝殻を見つけては心 を浮立たせているのだ。眼前には底知れぬ真実の大海が遙か広がっている。

 

文の形を舐める

現在完了以外の have: I seem to have been... (〜であったように思える)  

have は現在完了。    

a. They've been partners for 20 years. (20年間結婚している)  

have のフィールは ZOOM UP(過去が現在に向かってグッと近づいてくる)で した。a の文では彼等の結婚生活が、現在に向かってZOOM UP され、そして今 の状況を覆っています。ほら、今でも結婚していますね。  

a'. They were partners for 20 years. (20年結婚していた)  

一方 a' の過去形はそれが単なる歴史のひとコマであることを示します。現在 から「遠く離れた」感触。白黒の情景。彼等の結婚生活はもうすでに終わりを 迎えてしまいました。  

have のもつ「現在にひきつける」感触は、現在完了だけでなく、have が用 いられるすべての用法を覆っています。グッと出来事を手元に引き寄せる運 動、それが have です。    

b. I seem to be only like a boy.  

この文は単に「少年に過ぎないように思える」。そこには「引き寄せる」感触 は皆無です。ところが本文の  

b' I seem to have been only like a boy.  

ほら、ここでは過去の出来事が引きつけられています。「少年に過ぎなかっ た」が seem (見える・思える)という現在の判断につながってくる感触。現 在完了とまったく同じですよね。  

c. John must have passed the exam. (試験に合格したにちがいない)  

have は may have (〜であったかもしれない)、must have(〜であったにち がいない)など、助動詞+have というコンビネーションで使われますね。まっ たく同じフィールですよ。c の文は「試験に合格した」という過去の出来事を 手元に「引き寄せて」、must(ちがいない)という現在の判断につなげている んですよ。  

d. Having made the promise, I must honour it.   (約束したからには尊重せねばならない)  

ここにも引きつける感触がありますね。過去の出来事を手元に引き寄せて「尊 重せねばならない」。

-ing の作るコンビネーション:a boy playing on the seashore    

このメールマガジンをお読みになっている方で、この文の「訳」で悩む人は いませんね。ですが、大切なのはそこに流れるフィール。それさえ掴むことが できれば、自分で書くことも話すこともできます。もちろん気軽に、ね。    

この文は「現在分詞の形容詞的用法」などと、重苦しい名前で呼ばれるべき ものではありません。

[a boy] [playing on the seashore]    

「少年」という名詞と「海辺で遊んでいる」という生き生きとした状況が、単 に「並べられている」、に過ぎません。a boy のイメージに playing on the seashore を貼りつけてあげましょう。気軽に「並べる」。それが -ing の フィールです。  

それでは念のため、名詞以外にも -ing を並べてみましょう。    

a. They sat there chatting. (おしゃべりをしながら座っていた)  

今度は   

[sat there] [chatting]   

と、「座っていた」という動詞句と「おしゃべりをしている」という生き生き とした状況が並んでいますね。sat there に chatting を「貼りつけて」あげ ましょう。さらに今度は文を並べます。  

b. Turning around slowly, he saw a lioness coming towards him.  

(ゆっくり振り返ると雌ライオンが彼に向かってくるところだった)  

b' [turning around slowly] [he saw a lioness coming towards him]  

「振り返る」という状況が「向かってくるのを見た」と並んでいます。二つの 状況を貼り合わせてください。-ing のもつ「生き生きとした状況」がこの文 にこの上もない緊迫感を与えていますね。2つの状況の同時進行が生み出す緊 張感。それがこの形ならではのフィールです。

過去分詞を使った同様の形が本文に出てきています。ついでに押さえておきましょう。  

過去分詞は「受動的状況」: the great ocean of truth lay all undiscovered before me

 undiscovered。もちろん undiscover などという動詞はありません。しかし イメージは普通の過去分詞と同じ。    

a. The fans left the stadium disappointed.  (ファンたちは落胆してスタジアムを後にした)    

a'. [left the stadium] [disappoined]  

「スタジアムを去った」と「落胆して(直訳は「落胆させられて」)」が並べ られ、disappointed という受動的(〜されて)状況が left the stadium に 貼りついているに過ぎません。-ing とまったく同じですよ。  本文も  

b. [lay] [undiscovered]  

「横たわっていた」と「見つけられずに」が並べられ、undiscovered という 受動的な状況が貼りついているに過ぎません。「見つけられることなく横た わっていた」となりますね。もちろん -ing と同様過去分詞は、名詞や文にも 並べて使うことができます。

「並べる」というフィールを自分のものにすること。それが英語をグッと楽 にしてくれるはずですよ。

浮遊する all: the great ocean of truth lay all undiscovered before me  

allの位置 。素敵ですね。allや each は文の中でかなり自由な位 置を取る ことができるので、このallは  

All the great ocean of truth...  (真実の大海、そのすべて)  

という解釈と、  

all undiscovered (まったく発見されずに)

と、 undiscovered を修飾する解釈(=totally undiscovered)の2通りが成り立ちます。 happy dilemma --- 素敵だと言ったのは、そのジレンマ自体です。恐らくこの注意深い書き手なら「どちらにも」allをひっかけています。all の位置を工夫するだけで グッと深みのある文章になっていることに、異存のある方はいないでしょ う。...力ある書き手というものは。なんとも。                 

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さて、これで Sir Isaac Newton の名文を舐め終わりました。私は波打ち際 に出ると、いつでもこの文章を口ずさんでいます。名文は読む物ではなく口ずさむものなのかもしれません。      

今週はここまでにしておきましょう。

     

□□□おーにしの不惑日記 (no.13)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

□集中治療    

そろそろ病院に泊まりに行く算段を立てねば。体を治して10月からは、    

獣になるぜっ。         

(編集部注:「なま獣」ということのようです)

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ここで「英語のはらわた」連載は途絶えています。