みなさんこんにちは。そろそろ英文を深く理解する、その価値がわかってき ましたね。そうやって積み上げた英文だけが、みなさんの血となり肉となり、 英語を書く際の力強い味方となってくれるのです。それでは早速今週の課題。
SHOCKVERTISING Lavish TV commercials and glossy mailshots may be the staples of modern advertising - but for those without deep corporate pockets, shock tactics are more appealing. Pressure groups, charities and even governments have employed graphic images and blunt slogans to highlight everything from animal cruelty to the dangers of drink- driving.【今週はここから】"Shocking adverts risk alienating the very people they want to reach. The debate over the merits of these ads also tends to obscure the issues they were intended to highlight." 【大意】 |
この発言は、ショック広告の実体をよくつかんでいないと理解が難しいかもしれません。ショック広告は、水着の女性が出てくるといったレベルのものではありません。ある国の政府が Stop Smoking! という趣旨で出した広告が、その典型例でしょう。
写真: 女性の真っ赤な唇が、吸い殻の山にめり込んでいます。 コピー:KISS A NON-SMOKER AND ENJOY THE DIFFERENCE |
同種の広告には、ニコチンまみれの肺(実物)の克明な、見れば吐き気を伴うような写 真も使われています。そうした衝撃を常に伴うのが、ショック広告なのです。 ショック広告がメッセージの受け手を「疎外」するのは当たり前の事態でしょう。衝撃が余りにも強すぎて皆が後ずさりしてしまい、肝心の「たばこは不健康である」というメッセージが受け手に届かない。そうした risk が常に付きまとうと、冒頭の文は述べているのです。
さてそれでは早速、個々の表現を舐めていきましょう。
非常に強い意味をもった単語です。alien という映画をご覧になったことがありますね。不気味な異星人の映画です。あの怪物に「頼むから殺さないでね、痛いから」と命乞いをすることが出来たでしょうか。よくわからない・意志を通 わすこともできない、そうした対象ゆえに alien なのです。
Alien Registration Card (外国人登録証)をご存じですね。無論正しい英語です。しかしこの単語のもつイメージゆえに、よくジョークの対象となっているんですよ。「へぇ。俺エイリアンなんだぁ。キュイキュイ」
さあ、もうこの alienate のもつ感覚がわかってきましたね。totally separate (完全に別々)にする、ということ。foreign などよりも遙かに距離を感じさせる単語なのです。もちろん代わりに put off なども使うことも可能です。ですがショック広告が人々を遠ざけてしまう、その距離の大きさをあらわすためには、まさにalienate が適任なのです。
ちなみに put off は次のように使います。
I wanted to buy the dress but I was put off by the price.
(その服を買いたかったけど、値段を見てやめた)
せいぜいが、「踵(きびす)を返す」程度の距離感しかない表現であることがわかりますね。
高校生のみなさん、もちろんここは関係代名詞の形です。 the very people を they 以下が修飾しています。reach の目的語の位置で people を解釈してください。「伝えたい人々」ということです。
reachは「手を伸ばしてタッチ」にそのイメージがあります。そこから「... に到着する」などの使い方が派生する単語。つまりは「距離」を感じさせる表現。思わずニヤッとさせられるでしょう? そう、alienate は「遠く離れた」という距離を感じさせる表現でした。「reach できる距離から遙かに離れてしまった」と、この2つの表現はきれいなイメージの連鎖を作っているのです(*1)。
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(*1)もちろん、この文章の作者が「意図的に」こういった文章の磨き上げを行っているかどうか、私には知る由もありません。ですが文章のプロであれば、この程度の工夫をしていたとしても、まったく不思議ではないのです。最初の著書「ネイティブスピーカーの英文法」の紹介記事を、教育雑誌に書いたことがあるのですが、見開き2ページほどの文章の中に「安」という漢字を16個使わせてもらいました。へへ。文字のサブリミナル効果 を狙ったといったところ。まぁ反則なんですが、販促のためには仕方がなかったんです。
このメルマガの共著者マクベイ先生と、日本語の詩を英語に翻訳したとき、芋虫が葉っぱを食べる「かりかり」「ぱりぱり」という音の翻訳に、2時間以上かけたこともあります。「かりかり」は歯のあたりに感じる感覚、「ぱりぱり」は歯ではなく、食べる対象のテクスチャーに重きがある音、それを写し取る英語の表現は...。
文章のプロは、ありとあらゆるテクニックを作品に注ぎ込みます。経験を積んだ書き手が、alienate/ reach というベストコンビネーションを意識的に・容易に編み出したとしても、まるで驚くには値しないのです。
赤の他人に向かってものを「書く」ということは、そもそもそういった作業なんだよ。
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この very を不思議に思わないでください。「まさにその人々」という表現。
目の前に両手で円を作ってください。そこをグッとのぞき込みながら「the very」と言いましょう。the very...にはそうした強い感覚が伴います。people を枠で囲い込み、まさにそういった人々が... そのフィールです。
この表現に非常に大きな強調が感じられる理由は、veryの「使われ方」にあります。
very は確かに「とても」をあらわす強意表現ですが、平たい(平凡な)強調であり普通 、 the very people に感じられるほどの強さはもっていません。これからもよく説明に上る強調のメカニズムなので、少し時間をかけて説明しておきましょう。
こうした強調のメカニズムを、私たちは「デフォルトからの逸脱」と読んでいます。ある事柄をあらわす通 常の表現---それがデフォルトですが---そこから逸脱するとき表現には大きな強調が与えられます。very は普通形容詞 (very pretty)や副詞(very fast) を強調する表現です。しかし the very people は people を修飾するという「逸脱した」使われ方をしていますね。それがこの表現に「力」を与えているのです。
逸脱による強調、別の例をもう1つ眺めてみましょう。
Mt. Fuji is a place to see when you
visit Japan.
(富士山は日本で行っておくべき場所の1つです)
be 動詞の後ろは a ... が標準的な表現。ここを「逸脱」させてみましょう。
Mt. Fuji is the place to see when you
visit Japan.
(日本で行くなら富士山しかないな)
どうでしょう。the の「唯一」の意味合いがクローズアップされ、---通常のthe から感じるよりも遙かに高いレベルの ---大きな強調がなされています。単なる a と the の違いですが、ネイティブのアンテナはこれを必ず捕捉します。恋人のつけ黒子がなくなっているのに気が付かない人はいないでしょう。慣れ親しんだ形からの逸脱は、それと同様のインパクトをもっているのです。
こうした標準的表現からの逸脱は、英語ではしばしば見受けられます。a pen のかわりに some pen。a pen のかわりに any pen。時制の一致を受けない場合。if...., ..... の帰結節に will でなく現在形が用いられる場合。この他にも山ほどある逸脱表現には、例外なく強調が与えられ突出した意味を持っているのです。
もちろん on でも about でも意味は変わりません。ですが...やはりここはover の出番でしょう。表現の微妙な優劣に関しては、以降の回に先送りしましょう。話が長くなりますから。ここでは over のイメージ「物体の上を円弧が覆っている」を押さえておきます。そう、merits(功罪)を debateが覆っているようなイメージ。そのイメージから、日本語に訳すとすれば「〜に関する」が相当となるのです。(*4)
高校生のみなさん、やっぱりここは関係代名詞の文ですよ。issues を they (ads) 以下が修飾しています。highlightの目的語の位置で issues(問題)を解釈してくださいね。
obscure は「暗い」が基本イメージ。ラテン語のobscuro(暗い)がその語源です。「暗」から「不明瞭・わかりづらい」が派生しています。もちろんこの文は、 obscure (暗)と highlight(光) が明確な対比を作っている「かっこいい」文。作者が本当に意図していたかどうかまではわかりませんが、単語を入れ替えた、hide the issues they were intended to focus upon と比べれば優劣は歴然としています。
adverts = ads: 「広告」。他に advertisement も。全て同じ意味。
tend to:「〜する傾向がある」。「to 以下に向かう」ということですね。
issues:「問題」。この単語は「発行」「公布」「刊行」「流出」など、さまざまな意味があるように見えますが、要するに something which has come out(出てきたもの)ということです。
intend:「意図する」。be intended to(for)... は be designed と等価。つまり「目的」をクローズアップする頻出表現です。
日本人がもっとも苦手とする時制が ---私の経験では --- この現在時制です。現在時制は広く、そして使いデのある形です。冒頭の文章を読んだとき、みなさんは現在時制のもつ「安定感」を感じなくてはなりません。
He walks to school. (彼は歩いて学校に行きます)
Quadratic equations never have more than 2 solutions. (二次方程式は3つ以上の解をもつことはない)
どちらの文も、安定したイメージをもっていますね。
「これまでも --- 今も ---そして(多分)これからも変わることがない」
という安定感です。 その安定感を感じることができれば、冒頭の文が「いつもこうしたリスクをもっている」という一般 論を述べていることがわかりますね。現在時制。その安定したフィールを、まずは感じてください。それが現在時制への入り口なのです。
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今週はここまで。たくさん書いたが、やっぱりまだまだ舐めたりぬ。ガリガリ君の出番だ。また来週。